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プロダクションノート

第9回 背景美術について パート2

本作の背景美術でかかせないのが、江ノ島基地のデザインですね!
今回は、糸曽監督に加えて、江ノ島基地のデザインを担当した上航さんにお話を伺いました!
お二人のタッグにより、実際にある江の島にSFチックで重厚感のある基地を想像し、デザインが生み出されました!

 

糸曽監督:「上航さんによって、3つのカタパルトと江ノ島基地を、構造上どうやったらできるかを考えてくださって、基地の設定を上げてくださいました。上さん、今回こだわったところを一言でいうと?」

上さん:「『リアリティとロマンのバランス』です!」

糸曽監督「笑、たしかに!ロマンは大事ですよね。もともとのデザインのきっかけは会議でどんな風にしようかってイメージを話したところからでしたよね」

上さん:「そうですね。カタパルトについては、最初の会議で糸曽監督から、サンダーバードのようにベクターマシンをそれぞれ別のギミックで登場させたい旨お聞きしました。とりわけ橋をカタパルトにするというのはその時点で明確だったと思います。同時にその会議では、確か脚本家の村井さんから、江の島の三姉妹の神様を3機のベクターマシンと紐づけられたら面白いのではないか、なんていうお話も聞けた記憶があります」

糸曽監督:「そうそう。昔の特撮みたいにしたかったんです。あと、せっかく江ノ島でやるなら歴史的背景など加味して意味を持たせたかったので」

上さん:「会議後個人的に江の島に取材に行き自分の足で島を歩きながら、地下に広がる秘密基地について想像しました。それは、辺津宮、中津宮、奥津宮の直下にベクターマシンの発掘坑があって、その穴を拡張し再利用する形で地下基地を建設したという事にしてはどうだろう、というアイデアでした。基地内のデザインは、まず実在するボーリングマシンの直径を調べるところから始めました。現実に近い寸法で基地全体のトンネルを構成すると共に、あえて壁面の曲面をそのまま残す事で現実的な地下施設の雰囲気を出そうと試みました。」

糸曽監督:「実際に一人で行かれてるあたり、さすがですね!ベクターマシンのベクターにはベクトル的な要素も含まれていて、三機がそれぞれ違う方向性や性質を持っているという意味合いもあるって河森さんから聞いたことあるので、それぞれ別の方向へ向かう発射口を設定してくださってるのはアクエリオンの設定の本質もとらえているな、と感じました」

上さん:「カタパルトの位置は監督たちのコンセプトが明確だったのと、現地を見てきたので迷うことはなく、あとは基地内のハンガーと各カタパルトをどう繋げるかだけでした。この位置関係は3Dでラフモデルを作って効率的に設計する事ができました」

 

こちらが最初の基地アイデアメモです。
司令塔を中心にして3つのカタパルトからベクターマシンが発射していく。
この初期アイデアを元に3つのカタパルトの設定が書きおこされていきました。

 

糸曽監督:「かっこいい!僕はこのデザインが一番好きです。江ノ島へ渡る大橋がカタパルトに変形するって一番やりたかったことなので」

上さん:「ありがとうございます!大橋カタパルトのコンセプトは、とにかくド派手に・メカの動きマシマシです。道路が滑走路となるのはある意味普通の事なので、ベクターマシンを牽引するシャトルのレールを橋の下側に設計して、ちょっとした意外性を持たせました。(天邪鬼っぽいですが。)」

岩屋カタパルト(ベクターティール発射ポイント)

糸曽監督:「たしか上さん的に一番お気に入りなのが岩屋カタパルトなんですよね?」

上さん:「はい。このカタパルトは出撃時の主張は控えめですが、設定的には一番気に入っています。このカタパルトの開口部の前にカーブを描いた堤防がありまして。これはゴムタイヤ式鉄道の軌道で湘南港灯台付近まで続いており、その先には本来の江の島にはないガントリークレーンが設置されています。というのも、このカタパルトは基地建設の際に最初に設けられた横穴で、カタパルトに改修された後も平時は基地の物資や機材の搬入口として利用されている、というバックストーリーがあるのです。これは基地のリアリティを演出する自分なりのデザインなんですが、(あくまでカタパルトの発注なのに)島にガントリークレーンを勝手に置いて怒られないかな…と心配もしていました。なので発表されたキービジュアルにこのクレーンを見つけた時は嬉しかったです」

糸曽監督:「そういうバックストーリー、僕は大好きですし、とても大事だと思っています。」

 

ヨットハーバー カタパルト(ベクターフェオ―発射ポイント)

上さん:「ヨットハーバーカタパルトのコンセプトは、ダムの迫力です。大きな水圧を制す重厚なコンクリート壁、鋼鉄のハッチ、そして排水の迫力でベクターマシン発進を盛り上げようと考えました」

糸曽監督:「ここもカッコ良いですよね。僕の記憶ではこのデザインをCGで設計していく際に、海水をどうやって排出するのが機能的にもデザイン的にも良いか、みたいなことも話し合った記憶があります。」

 

そしてデザインが決まった後、スタッフへの共有事項として江の島の各カタパルトの解説も作成されていきました。
ぜひ拡大してみて詳細な設定をご覧ください!

 

大橋カタパルト(ベクターシーゲル発射ポイント)解説資料

 

岩屋カタパルト(ベクターティール発射ポイント)解説資料

 

ヨットハーバー カタパルト(ベクターフェオ―発射ポイント)解説資料

 

糸曽監督:「これらの資料をご覧いただき、改めて本編の発進シークエンスをご覧いただけたら嬉しいです。上さんから視聴者の皆様へのメッセージはありますか?」

上さん:「現世と過去神話、そして現世宇宙と神話宇宙、それぞれの世界がこの先どうなってしまうのか!私も視聴者の皆さんと一緒に最後まで楽しませて頂こうと思っております!」

 

リアルさをベースにしながら、デザイン的にもカッコいい背景美術の江の島基地デザイン。
実際に江ノ島へ足を運んで、本作の基地デザインに注目してみてくださいね!

 

(AP:村上、菅野)

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