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プロダクションノート

第5回 実写アニマティクス編

第4話お楽しみいただけましたでしょうか?

ところで本作のエンディングに「実写アニマティクスキャスト」というクレジット表記があります。

なかなかTVアニメのクレジットでは見かけないクレジットですが、
みなさんお気づきでしたでしょうか?

今回はその「実写アニマティクス」に関する話になります。

糸曽監督の提案により、本作では絵コンテではなく、実写映像を使用したVコンテ(=ビデオコンテ)で制作となりました。

※絵コンテ…イラストを用いた映像の設計図。必要なカットやセリフ、カメラワークなど記載されているもの。

 

糸曽監督:「今の時代、スマホで気軽に映像を撮ることができますし、動画撮影はかなり身近な存在です。絵コンテではなく動画を撮影することでできるビデオコンテでアニメを作れないかということに興味があり、実施することになりました」

糸曽監督を中心に、最初はテストのつもりで始まった実験的なVコンテ制作。

糸曽監督:「普段実写で映像撮るときにカメラマンでお願いしている人に機材を持ってきてもらいました。それでマスター(マスターショット)の絵を撮ります。ほかのところはスマホ等手持ちのカメラで。初めはテストで少しやるつもりでしたが、撮影チームが皆やる気になってくれて、全部撮っちゃおうかということで12話分を撮ることになりました」

※マスターショット…基本となる位置から撮影されたショット。
登場人物の動きや対話を流れを撮影し、映像全体を把握する為に行う

そしてカメラ以外にもVコンテで活躍してくれたのは、冒頭でご紹介したエンディングクレジット内の表記にもいらっしゃった「実写アニマティクスキャスト」の皆さん!

Vコンテの撮影時にキャラクターを演じてくださった皆さんです。

撮影場所はというと
糸曽監督:「スタジオのグリーンバックで撮っていたところもありましたし、江の島に実際に行って撮影もしました」

なんとスタジオでの撮影に加え、実写アニマティクスキャスト・カメラ部隊と一緒に今回舞台となった江の島でも撮影ロケを実施。その撮影はなかなか大変だったようで。

糸曽監督:「3日間、丸一日朝から晩までやっていました。ロケハンも加えると4~5日くらいは江の島に行きましたね」

糸曽監督:「撮影したときに修学旅行で来ていた生徒に何の映画ですか?と聞かれて、サメ映画って答えました(笑)」

このロケ地での撮影もあり、本作の江ノ島描写はかなり実際の場所に寄せたものになりました。また現地で撮影することで、思わぬアイデアが降ってきたこともあるようで

糸曽監督:「さざえ島の裏は現地に行ってみて、とてもいい場所だったので、本編で登場させました」

と糸曽監督が振り返るように江の島を舞台にした本作のプリプロダクションでは、重要な役割を果たしたVコンテ撮影。

糸曽監督:「Vコンテをやって良かったのは、ただ文字で読むより演技してもらったのを聞いた方が雰囲気がわかり、尺がどれくらいになるかも大体見える。それはすごく面白かったです。キャラクターの解像度も上がりました」

Vコンテの撮影にはシリーズ構成の村井さだゆきさんも同席していました。

糸曽監督:「村井さんは撮影していたスタジオの部屋の隣で撮影を見ながら脚本を修正して、監督の僕にこんな風に書き換えてました!撮ってください!みたいに持ってきてくださいました。脚本家の方々は、普通シナリオが決定稿になったら終わりです。その決定稿のシナリオを基に絵コンテを書くんですが、そこで修正を入れることは難しく、今回は決定稿の後に演技を見て直せる機会をもらえたのがすごく嬉しかったみたいです」

 

撮りながらどんどんアップデートされていた本作のシナリオ。
キャラクターも撮影しながら、だんだん作り上げられたようで。

糸曽監督:「キャラクターで言えば猿田が一番、Vコンテに出演されていた役者・湧津ユウミさんに引っ張られてキャラクターが移動していきました。あのねちっこい演技とかは湧津さんのおかげです」

そして湧津さんは、Vコンテと同じ猿田役で声優としてもキャスティングされました。

ただ糸曽監督的には、このVコンテ撮影、良いところばかりではなく難しい点もあったようで

糸曽監督:「今回のアニメってどちらかというとコミカルなキャラで等身も違うとなるとそのままトレースできるわけでもない。結局、映像を基に簡略化してアニメのガイドとなる絵コンテを書く必要があるというところに行き着いたので。最初から絵コンテにしておけば良いじゃん問題はあったんですけど、でも役者さんや実写アニマティクスチームのお力をお借りして、シナリオをアップデートし、プリプロダクションをみんなで作り上げれたことが実写コンテの魅力でした」

ぜひ来週からは「実写アニマティクス」のクレジット、そして猿田の演技にも注目して放送をお楽しみください!

(AP村上、菅野)

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